da Vinci Surgical System オフサイトトレーニング報告
金沢大学 消化器・乳腺・移植再生外科 二宮 致、林 泰寛

  金沢大学附属病院では、平成24年6月に薬事承認済み内視鏡手術支援ロボット da Vinci Sを導入しました。 これまでに導入済みの旧型 da Vinci Standard, 治験用 da Vinci Sを合わせると3台の手術支援ロボットを有することになり国立大学では最多のロボット所有数となりました。 しかし前立腺癌手術以外の内視鏡手術支援ロボット使用はまだ保険収載されていないため、現在ワーキンググループにてda Vinci の適正運用に関する討議が行われているところです。 金沢大学消化器・乳腺・移植再生外科では、今後消化器疾患の外科手術に対し内視鏡手術支援ロボットを導入すべく準備をすすめておりますが、 過去の他大学での事故報告もありワーキンググループでは当面術者に対して高いハードルを設けていくこととなりそうです。
  今回 da Vinci 導入の一環としてDDSOの支援の元、藤田保健衛生大学ダヴィンチ低侵襲手術トレーニングセンターで2日間のオフサイトトレーニングを行う機会を得ました。 今回のトレーニングには当科から二人の外科医と手術部から一人の看護師が参加しました。  

  初日はオリエンテーションの後ドライラボを使ったスキルドリル(タイムトライアル)を行いました。 その後、豚を使ったアニマルラボにて生体実習を行い、ドレーピング・ポート作成・ドッキングの後、午前中は 尿管の剥離・切離と再縫合、腎動脈剥離と切離、腎静脈の剥離と結紮切離を行いながらda Vinci の基本的な 使用方法を実際の手術操作により学びました。
  午後は専門部位別実習となり、新たなポート作成の後、 Heller 食道筋層切開、Nissen 噴門形成術を行い、 さらに胃小腸吻合を完全鏡視下の da Vinci 下直接2層縫合により行いました。 最後に スキルドリル(タイムトライアル)により時間短縮を確認しました。
  2日目は術者と介助者が交代して同じ操作を行うことで、da Vinci使用の理解を深めました。 更に2日目の最後には食道裂孔から下縦隔の操作を体験する機会にも恵まれ da Vinci の得意とする狭い視野での操作性を体感できました。 実際に da Vinci を生体で使用した感想として、縫合や結紮といった鏡視下手術では高難度とされる手技がda Vinci では 3D モニターによるリアルな拡大画像と2つの関節を持つインストウルメントの使用により、 実に自然に行えることに新鮮な感動を覚えました。 また狭い空間での操作が得意で、コンソールに座ってリラックスした姿勢で、深部の複雑な操作を行えることは、これまでの手術の概念を覆す進歩であると感じました。  

  現在では、コストもかかり敷居の高いロボット支援手術ではありますが、将来保険収載される可能性もあります。 また直感的に使用できるロボットは決して操作が難しいものではありません。また当院で建設中の CPD センターには da Vinci のトレーニングシステムも導入される予定となっています。 今後ロボット手術は、将来の外科を担う次世代の若い外科医による近未来手術として普及していく可能性を感じます。 トレーニングは円滑に進みあっという間の2日間でしたが、実に多くの収穫があり、無事2人とも Certification を得ることができました。 
  今後、他施設で実際の da Vinci 手術見学を行った後、病院執行部会議・臨床試験審査委員会・手術部の承認を経ていよいよ当科でも da Vinci 手術に取り掛かる予定です。 まだまだ準備が必要ですが今後の消化器外科手術発展のためロボット支援手術を導入していく決意を新たにしました。
  最後にこのような機会を与えてくださいました DDSO に心から感謝を申し上げます。


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